KOTOBASM

頭の中にある思想は言葉ではない。映像でもない。いうなれば《もやもや》である。その《もやもや》を手先を使って記録することではじめて言葉になる。

弟よアニキにたいしてなんて失礼なことをいうのだ【デパートの催物の思い出】

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 世はゴールデンウイーク。なかには海外旅行に連れていってもらうお子さんなんかもいるようだ。しかしもちろんそういう子ばかりではない。親御さんの都合により、家族でどこか出かけることすらままならない子だっている。

  それは仕事の都合であったり、経済的な理由であったりさまざまであろう。そういった中にあっても、それぞれ工夫をして、子どもたちの思い出に残る休日を作ろうとしているヒトもいる。

 あれはいつだったか。まだ保育園児だったころだ。母親に連れられて、デパートの催物に行ったことがある。水木一郎ショー。新聞の折り込みチラシでみて、行きたいと必死にせがんだ甲斐があった。

 アニキこと水木一郎。大好きで観ていたアニメや特撮ドラマの主題歌は、いつだってアニキが歌っていた。そしてNHKの「おかあさんといっしょ」の歌のおにいさんでもあった。これもよく観ていた。

 そして当日。年子である弟がいるのだが、彼はあまり興味がなさげだった。けれども家に一人置いていくわけにもいかない。いっしょについてきた。わけもわかっていないのだろう。きょとんとした顔をしていたのを、いまだに覚えている。

 催物会場には早めにきたので最前列に陣取った。待ちに待って、やがてアニキはステージにあらわれた。そして観客席にいる子どもたちにリクエストを募った。大きな声で「コンバトラーV!」といってみた。すると「もちろん歌いますよ」と応えてくれた。

 ひととおり出たかなというところで、少しの間ができた。すると弟はボソリと。

宇宙戦艦ヤマト

 と言った。その瞬間すかさず頭をひっぱたいたのも、いまだに覚えている。アニキは小さな声で、「それはちがうヒトの歌ですね…」と言った。純粋な子どもの悪意のないまちがいというのは、意外と攻撃力が強い。

 このような記憶が鮮烈に頭に残っているというのも、小さい子どもなりに楽しい思い出だったという証しであろう。それがたとえ無料の催物でも。どうかみなさまよい休日を。

 今日のところはこれまで。ごきげんよう。この呼吸が続く限り、僕は君の傍にいる。