雨止んでひと傘を忘る。兎角人間は時の流れに過ぎし日のことを忘れがちなものです。推理と思い出のご対面。それは秘密です!!
という桂小金治の名調子でその番組ははじまった。
「それは秘密です!!」は、日本テレビで火曜日の19時30分から放送された。”泣きの小金治”こと桂小金治が司会で、生き別れた家族など、会いたいヒトを捜索するというヒューマンバラエティである。
うちの母・美喜子はこの番組が大好きで、毎週欠かさずといっていいほど観ていた。ふだんはドラえもんに出てくるジャイアンのお母さんのようにギャースカうるさい母だったが、この番組を観ているときは違った。
茶の間で当ブログ管理人もいっしょに観ているのだが、母はたいてい同じようなところで泣くのである。だいたい探してきたヒトが出てくる直前、そのヒトの手紙を小金治が読み上げているところだ。
母のかたわらで息子はというと、「泣くぞ。泣くぞ。ほら泣いたー。」などと心の中でほくそえんでいる。この千葉市の埋立地にある、一見乾いたかんじをうける団地が、このときばかりは少しばかし湿るのであった。
またこの番組は演出が憎かった。大団円をむかえ、エンディングテーマがながれて、普通ならそれで終わりなのだが、エンディングテーマが終わったあとも、その感動の出会いをはたしたヒトの姿をしばらく映すのである。
それでもって泣いている2人の肩を小金治がたたいて、「よかったねぇ。ほんとうによかったねぇ。」なんて言っているのだ。まあクサイ。でもそんなの当時の母・美喜子には関係ない。泣きの小金治に涙腺の蛇口をさらにひねられているのである。
泣くというのは、ニンゲンに必要不可欠なガス抜きなのかもしれない。
今日のところはこれまで。ごきげんよう。この呼吸が続く限り、僕は君の傍にいる。