タフでなければ生きて行けない。優しくなれなければ生きている資格がない。

ソビエト連邦の時代【「旅行者の朝食」米原万里】

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 「旅行者の朝食」という、それはとてもとてもマズいカンヅメがあるらしい。日本のモノではなく、ロシアのしかも旧ソビエト時代のカンヅメである。なぜ知ったのかというと、米原万里さんの本に書いてあったからだ。

 

 恥ずかしながら申し上げると、この方の名前を最初は存じ上げなかった。電子書籍の端末でふだん本やマンガを読んでいるのだが、その端末に”おすすめ本”として、出てきたのである。

 

 この表紙絵にまず惹かれてしまった。電子書籍として購入してしまったが、やはり紙の本で購入すればよかったと後悔している。それぐらい美味しくなさそうな武骨な絵であり、むしろ芸術的だ。

 

 米原さんはロシア語の通訳をやっていた方で、この本はロシアの食について書かれている。そして”旅行者の朝食”の中身についても言及されているのだが、その形容がすさまじい。

 

牛肉ベース、鶏肉ベース、豚肉ベース、羊肉ベース、それに魚ベースと、何と五種類の品揃え。で、中身はというと、肉や豆や野菜と一緒に煮込んで固めたような味と形状をしている。ペースト状ほどには潰れていない。そう、ちょうど犬用の缶詰、あれと良く似ている。これに、あとはパンと飲み物があれば、一応栄養のバランスがとれるようになっている。味は……、一日中野山を歩き回って、何も口にせず、空きっ腹のまま寝て、その翌朝食べたら、もしかしたら美味しく感じるかもしれない

 

 なにかいかにもこう”旧ソ連”というかんじではないか。社会主義国のボスである。美味しさよりも、とにかく栄養。合理的ではあるが、華美の”か”の字も感じられない。”ソ連”を知らない平成うまれの若者への、説明する場合の比喩につかえる。

 

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 これはわがアパートに所蔵している、1984年の社会科の参考書の、ソビエト連邦の項なのだが、とにかくソ連はバカでかかった。なぜか日本も赤くなっているが、そこのところはご愛敬ということで。むかしの印刷技術などこんなものだ。

 

 そうなのだ若者たち。むかしはこのようなバカでかい”社会主義国”というものが、あったのである。このバカでかい”主義国”がなぜ最終的に崩壊してしまったのか。もしかしたら”旅行者の朝食”もその原因の一端なのではないだろうか。

 

 そのむかしは、いくらでも他の国の情報がシャットアウトできた。それが技術がすすんで他の国の情報も入るようになってしまった。で、その情報に触れてみたら、”あちらの国”ではすごい美味しそうなモノを食べている。

 

 メシというものは、やはり味や見た目を楽しむものなのである。栄養があればいいというものではなかった。それにソビエトのヒトビトは気づいてしまったのではないだろうか。

 

 まあそんな単純なハナシではないのだろうけれども、確実にいえるのは、いまのロシアには、”旅行者の朝食”は売っていないということだ。ただロシアのジョークに出てくるワードとしては残っているらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 今日のところはこれまで。ごきげんよう。この呼吸が続く限り、僕は君の傍にいる。