タフでなければ生きて行けない。優しくなれなければ生きている資格がない。

NHK ―危機に立つ公共放送




著者は、かつて25年間、新聞記者として「放送」を担当。
記者クラブはNHK内にあり、取材を四半世紀も続けたということになる。
NHKを語り、問題提起するにはうってつけの人だ。
岩波新書だけあって、権力に対する舌鋒は鋭い。

先日あたらしい会長が就任し、その人事が安倍総理の肝いりではないかと言われている。
それだけでなく、3代続いて会長が財界人であり、そういう意味でNHKが「権力の犬」となっている。
「ETV2001」の政治介入疑惑をとりあげるなど、NHKがいかに権力と対峙し独立性を保たねばならないか強く訴えかけている。

また筆者は集団的自衛権の報道のしかたについても、反対派の意見が極端に少ないとも言っている。
時間換算にしてみるとたしかにそうだ。
けれども諦観ではないが、こういうもんだろうというかんじはある。
というのも政権は国民の審判によって決められているからだ。

そしてその政権に予算を握られているかぎりは、政策の広報機関にならざるをえない。
公共放送ってそういうものなのだ。
多数派が決めた政権の政策を多数派に知らしめるのが公共放送なのだ。
ユニバーサルサービスというのは多数派のためにまずあり、少数派はそのおこぼれをもらうものだ。

そうすることが無難なのである。
不満であるなら、いかに公共放送の番組を冷静に客観的に観るか論じた方がいい。
それのほうが早い。
言い過ぎなのは承知だが。

いまでは著者も高齢で、失明の危機にあるという。
そういったなかで、渾身のちからをこめて書いているのは伝わった。
岩波新書なのでお堅いかんじだが、NHKの歴史から、現在の問題点にいたるまでわかりやすく記されているので、テレビ好きなひとはぜひ。