KOTOBASM

頭の中にある思想は言葉ではない。映像でもない。いうなれば《もやもや》である。その《もやもや》を手先を使って記録することではじめて言葉になる。

笑っていいとも閉幕

やはりお笑い芸人としてこの事は言及しないといけないだろう。
とは言っても、私は笑っていいともを実はよく知らない。
昼休みにテレビを観られる環境が無い仕事ばかりであったし、そもそもそれを必要としていなかったりで。
ただ、この番組を通してタモさんがお笑いという世界の前線に立っていたのはうすうす感じてはいた。
テレビという箱の中からタモさんはシニカルに我々を挑発していた。
その箱に展開されていたのは、客席との垣根が無い空間。
いつでもそこにいれば、誰でもタモさんに危害を加える事が出来る。
だが、タモさんはシニカルに挑発し続けていた。
一杯のかけそばを、かけそば食う金あるならインスタントラーメン3つ買えると一刀両断にした。
小田和正と一触即発の危険な状態にもなった。
ステージに乱入してきた輩も何人かいた。
だが、タモさんは動じない。
動じないまま30年の時が経ってしまった。

この番組の真骨頂。
それは、しのざき美知を掘り出した事ではなかろうか。
彼女はこの番組の「私のメロディ」というコーナーで世に出た。
それからあれよあれよと有名になっていき、終いにはものまねお笑い四天王となりものまね王座決定戦でストッキングをかぶって小松方正のモノマネをやるまでに到達した。
「素人」特有の爆発的勢いというのが、当時のテレビにはあった。
そう考えると今は「素人」が名前も出さず、顔も出さずにちょこちょこ何か書いて人に見せるだけで満足してしまっている。
そういうツールを我々は現在、手に入れてしまったのだ。

笑っていいともは終わってしまう。
だが、寂しさはそんなには無くて、いいともから解放されて、タモさん次は何をやってくれるんだろうという期待がある。



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(2013/07/13)
樋口 毅宏

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