KOTOBASM

頭の中にある思想は言葉ではない。映像でもない。いうなれば《もやもや》である。その《もやもや》を手先を使って記録することではじめて言葉になる。

怪優・手塚とおる

手塚とおる画像
気持ちとか言われても僕の気持ちもよく分からないのに役の気持ちとか言われてもよく分からないな

手塚とおる(俳優) 


フジテレビ「アウトデラックス」に俳優の手塚とおるが出演した。そのときの発言がこれである。俳優としてこれはどうなのかという感じに一見聞こえるのだが、この人に関してはもうこれでいいのかなということにしておこう。


手塚とおるといえば、ドラマ「半沢直樹」の古里則夫であったり、「HERO」の東京地方検察庁特別捜査部副部長役であったりと小悪人の役なのだから要は主役の引き立て役である。だがカレはそこだけに留まらず観ているヒトの心に爪あとを残していく。 


しかし小悪人の役なので、観ているニンゲンはどうでもいい存在にしてカレを忘却に追いやろうとする。しかし手塚とおるというヒトはまたテレビ画面に出てきて「またこいつか!」と視聴者に思わせるのである。ただみんな名前は知らない。そういう存在。


そういうヒトだから、もう役の気持ちなんてわからなかろうがいいのである。このヒトを活かすも殺すも脚本家しだいなのである。 いわゆる怪優だ。怪優の定義そのものは曖昧だが、存在感の特異さだけでいうなら怪優だ。


この存在感の特異さというのは、カレの青春時代に遡る。カレは一切高校ではヒトと話をせず筆談でコミュニケーションをとっていたそうだ。しかも大体答えは「はい」か「いいえ」 のみ。修学旅行は他のクラスメートとは行動せず旅館にいるか旅館の周りを歩くだけ。


会社勤めもしたことはなく、舞台デビューは唐十郎の舞台。セリフを忘れたらそれをごまかすためにナイフで顔を切って血を塗りたくって、そのうちセリフを思い出す。こんなヒトに役の気持ちを考えろなどというのがもはや無理なのである。