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頭の中にある思想は言葉ではない。映像でもない。いうなれば《もやもや》である。その《もやもや》を手先を使って記録することではじめて言葉になる。

山手線29駅中「最も雰囲気が好き」「ダサい駅」考(後編)

山手線29駅中「最もダサいと思う」駅は?

1位 鶯谷 (うぐいすだに) 102票(24.3%)
1位は「鶯谷」。2位に大差をつけてトップとなった。
1日の平均乗車人員は29駅中一番少ない駅。一番多い新宿と比べると30分の1の利用者の駅だが、なぜ「ダサい」という票がここまで集まったのだろうかという疑問が沸く。どうやら通りかかった時の印象や、その時目に入ったもので判断する人が多かったようだ。
駅前に立ち並ぶ建物から、「ラブホテルが多い」「いかがわしい感じ」「風俗店が多いイメージ」といった印象を持つ人が多かった。鶯谷は、華やかな駅舎の中でも、比較的こぢんまりとした駅である。「場末な感じがする」「うらぶれている印象」などが挙がった。コメントからすれば、実際に降りて確認したわけではなさそうである。

歴史をさかのぼれば、江戸時代には多くの文人が住む閑静な別荘地であった。現在も、文豪、正岡子規ゆかりの子規庵も近くに残っており、風情のある土地である。駅に降り立って歩いてみれば新しい魅力が発見できるかもしれない。

2位 新大久保 (しんおおくぼ) 47票(11.2%)
新大久保といえばコリアンタウンとして有名である。今は以前よりも下火にはなったものの韓流ブームに沸いた頃には多くのファンが押し寄せた。様々な韓国料理を楽しむことができるという魅力もある。 アンケートには、「多国籍の人が利用しているイメージがある」「すでに外国人タウンと化している」といった声が挙がった。現状では韓国だけではなく、多国籍の街として進化しているようだ。「看板などが日本ではない」「何かなじめない」など日本語以外の言葉が立ち並ぶことから、日本人の中には言葉の壁からちょっと気後れしてしまう人もいるようだ。

3位 巣鴨 (すがも) 44票(10.5%)
巣鴨がダサいと思う理由としてとにかく多かったのは、「お年寄りが多いから」「高齢者の原宿だから」「おばあちゃんの街だから」という声だ。自分たちのものではないと認識している若者の声が目立った。

4位 田端 (たばた) 39票(9.3%)
田端も鶯谷と同様、駅に降りたことがない人の声も多かった。 「駅にお店が少ない」「目立つものが何もないから」「都会の田舎」「取り残されている感じがするから」など、地味な印象を持つ人から選ばれたようだ。

5位 西日暮里 (にしにっぽり) 14票(3.3%)
5位には西日暮里がランクイン。「やや昭和感が強い」「古い」「年配の人が多く住んでいるイメージ」などの意見から、昔っぽさを感じさせてしまっているようだ。
 
 一方ダサいと言われる山手線の駅もソウソウたる面々である。そもそもダサいという表現が古くて垢抜けていないのだが。しかし他の言葉を考えてみると、ダサいという言い方はいちばん殺伐としていない気がする。

 しかしこの鶯谷の言われようはなんだ。ラブホテルが多いっていうが、恵比寿の個室居酒屋に行くカップルだってどうせそのあとラブホテルに行くのだろうし。やっていることは鶯谷も恵比寿も一緒ではないか。ラブホテルがいっぱいあるからダサいというヒトは、いざとなったら青空の下でホリホリすればいい。

 この5つの駅はいずれも行ったことがあるが、共通するのはどこもニンゲン味があるというところだ。昭和の香りがほどよく漂っている。 田端が地味だというが、駅前に広がる光景はそういう意味で素晴らしいものを持っている。

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 さて”雰囲気が好き”と”ダサい”両方取り上げてきたが、ダサい方はダサい方でインパクトがあっておいしいと前向きにとらえることができる。いちばん問題なのは、どっちにもあげられないなおかつ地味なところではないだろうか。

 それは巣鴨と田端にはさまれた駒込である。田端よりもある意味取り残されている。 こっちのほうが問題である。