KOTOBASM

頭の中にある思想は言葉ではない。映像でもない。いうなれば《もやもや》である。その《もやもや》を手先を使って記録することではじめて言葉になる。

体力の限界、気力もなくなり引退することになりました(千代の富士)

元横綱・千代の富士の九重親方が死去 | NHKニュースより


  引退会見のこのコトバ。活字にすると淡々としているけど、映像でみるとその無念さみたいなものがすごい伝わってきたんだよね。この日は信楽高原鉄道事故があった日(平成3年5月14日)でもあってね。よく覚えているよ。

 千代の富士の全盛期は、俺が熱心に大相撲を観ていた時期でもあったんだ。まあとにかく強かった。憎らしいまでに強かったんだよ。それに加えて同じ時期に活躍していた同じ部屋の北勝海という横綱がいてね。

 同部屋の力士は本場所では対戦しないというルールがあったから、他の部屋の力士より有利なわけさ。もうこうなってくると盤石だよ。だから俺の中では憎たらしいアンチヒーローだったわけさ。

 千代の富士は強さだけでなく、土俵入りがまた美しかったんだよね。体は小さいけど柔らかくて、足腰も強くてさ。四股を踏むときに”タメ”があるんだよ。そしてせり上がりのときのあの鋭いまなざし。魅せられたねあれは。

 千代の富士の思い出の一番といえば、昭和60年の7月場所の大徹戦だね。千代の富士はうっちゃりで負けたんだけど。実は俺、対戦相手の大徹のファンでさ。千代の富士とは正反対で、背だけは大きいのだけれど、やる気がなさそうな力士でね。

 で、またどうせ負けるんだろうと思って、鼻くそほじって観ていたら勝ったんだよ大徹が。あのときばかりは、鼻の穴から指を抜くのを忘れるほど驚いたね。かなり印象に残っているよ。

 北の湖に次いで千代の富士も。力士って体のつくり方が過酷なせいか早死するヒトが多いけど、やはり熱中してたころに活躍していた力士がこの世を去るのは本当に切ないよね。

 今日のところはこれまで。ごきげんよう。この呼吸が続く限り、俺は君の傍にいる。