KOTOBASM

頭の中にある思想は言葉ではない。映像でもない。いうなれば《もやもや》である。その《もやもや》を手先を使って記録することではじめて言葉になる。

【テレビメモ】神の領域を走る ~パタゴニア極限レース141km~

 自分のお笑い活動をふり返ってみておもうこと。それはやはりバカなことを愚直にマジメにやっているニンゲンに面白さではかなわないということである。どんなに趣向をこらしてギャグを作ったとしても勝てない。そんなふうに、10月2日に放送されたNHKスペシャル「神の領域を走る ~パタゴニア極限レース141km~」を観ていて考えさせられた。
道なき道、原野や山岳地帯を100キロ以上、不眠不休で走り続けるタイムレース「ウルトラ・トレイル(山岳)ラン」、国際レースとして世界各地で開かれるこの競技の完走率は平均65%。
しかしその半分にも満たない、わずか30%という超過酷な大会が南米パタゴニアで開催される。絶景が広がるこの大地にひとたび踏み入れると、悪路や目まぐるしく変わる気候など、次々とむき出しの自然の猛威が襲いかかる。これに果敢に挑んだのが、世界18か国から参加したトップレベルの男女91人。
彼らが共通して恐れるのが、レース終盤の「神の領域」を呼ばれる、未知のゾーン。果たして彼らのいう「神の領域」とは何なのか。47歳になる日本の第一人者・鏑木毅(かぶらきつよし)に完全密着。特殊撮影やレース中の心拍数変動などのデータを駆使し、神の領域の可視化を試みる。体力気力の限りを超え走り抜こうとする人類の、秘めた野生と本能に迫る、世界一過酷なレース・全長140キロの人間ドラマ。
 バカなことの1つに、”無謀なこと”をやるというのがある。もちろん走っているほうはなにも考えていないわけではなく、いろいろ対策を練ってはいるだろう。けれども”神の領域”にいってしまえば、その対策なんてあまりにも無力だ。想定内であったはずなのに、想定外のなにかが起こってしまう。

 でもそんなことをやってのけるニンゲンをみるとほんとうに面白いし心を動かされる。ましてや同じ日本人ならなおさらだ。47歳という歳も自分とそう変わらない。テレビカメラの前で自信満々で語っていた、また優勝候補の23歳の白人男性が途中でリタイアしたのをみると、勝負というのは本当にわからないと感じさせられる。

 レースの終盤で、鏑木さんに変化が起きるというので、まさかここで体調に異変が?とドキッとしたのだが、その変化というのが、まさに”神の領域”というか、ニンゲンの解脱のようなものだった。もし興味があるヒトは、10月5日の午前0時10分に総合テレビで再放送をやるので観ていただきたい。

 今日のところはこれまで。ごきげんよう。この呼吸が続くかぎり、僕は君の傍にいる。