KOTOBASM

頭の中にある思想は言葉ではない。映像でもない。いうなれば《もやもや》である。その《もやもや》を手先を使って記録することではじめて言葉になる。

ヒョー、ショー、ジョー!

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 昭和のころの大相撲の千秋楽。優勝力士が決まり表彰式がはじまる。はたしてどれほどあるのだろう。延々と賞品やトロフィーの授与がつづく。そのなかでひときわ目立つ存在。それがいつも「ヒョー、ショー、ジョー!」っていって笑わせてくれる外人さんだった。

 

 

 この外人さんのインパクトそのものが強すぎて、なんという名前のトロフィーだったか覚えていなかったのだが、調べたら「パンナム杯」であった。パンナムすなわちいまはなきパンアメリカン航空である。

 

 外人さんの名前はデビット・ジョーンズさん。パンナムの極東地区広報担当支配人という肩書だ。なんと昭和36年から優勝力士にトロフィーを授与していた。どうりで和装も似合うはずである。

 

 このデビットさんは日本のテレビ史にも大きな足跡を残していて、カレとTBSが共同で企画して作られたのが、昭和34年から30年間つづいた紀行番組「兼高かおる世界の旅」である。

 

 毎回その小さい身体で、42キロものトロフィーを優勝力士に渡しつづけたデビットさんだが、トロフィーを落として転倒したことがある。昭和48年1月の初場所のときであった。以上ちょっとしたまめちしきだ。

 

 そんなカレだが初登場から30年、平成3年までトロフィーを渡していた。もう最後のほうは見た目まで、日本人にみえたぐらいだった。そして2005年に89歳でこの世を去る。

 

 そうか。もうパンナムもなくなってしまったし、デビットさんも、そして千代の富士もこの世にいないのか。そう思うと、玉手箱を開けてしまった浦島太郎のような気分になってしまう。

 

 今日のところはこれまで。ごきげんよう。この呼吸が続く限り、僕は君の傍にいる。