KOTOBASM

頭の中にある思想は言葉ではない。映像でもない。いうなれば《もやもや》である。その《もやもや》を手先を使って記録することではじめて言葉になる。

それはまるでタイムカプセルのように(前編)

 毎週録画して観ては保存している番組がある。日曜日のお昼にやっている「NHKアーカイブス あの日 あのとき あの番組」だ。しばらく高校野球中継でお休みしていて、再開後の第一弾が、「NHK特集・勝負~名人への遠い道~」だった。

 

 「NHKアーカイブス あの日 あのとき あの番組」は過去にNHKで放送された番組を流して振り返る番組で、「NHK特集・勝負~名人への遠い道~」は昭和56年に放送されたドキュメンタリー番組である。いまから37年前ということになる。

 

 スポットライトがあてられたのは、当時奨励会にいた31歳の将棋棋士、鈴木英春。奨励会というのは、わかりやすく説明すると、プロ棋士になるための登竜門のようなもの。奨励会にいるうちに、厳しい条件をクリアしなくてはならない。

 

 そして当時、奨励会の年齢制限は31歳(現在は26歳)で、32歳の誕生日までにその年のリーグ戦で高い勝率を残さなければならない。そのギリギリのところで、鈴木は戦っていた。

 

 奨励会にいるうちは収入がない。鈴木は同期にも後輩にも置いて行かれ、15年間とどまっている。そして彼には駆け落ちして一緒になった、7歳年下の身重の奥さんがいた。

 

 どうにかしてでもプロ棋士にならねばならないのだが、最後の勝負に負けてしまい、結局それはかなわぬ夢となった。

 

 当時もしリアルタイムでこの番組を観ていたら、ああ勝負の世界は厳しいのだなあ、今後このヒトは家族とともに、どうやって生きていけばいいのだろうと、しみじみ考えたことであろう。(後半へつづく)

 

 今日のところはこれまで。ごきげんよう。この呼吸がつづくかぎり、僕は君のそばにいる。