「一杯のかけそば」というおはなしを覚えているだろうか。昭和から平成に変わるころに、まずラジオで”実話の童話”として放送されて評判をよび、産経新聞でとりあげられ、国会の質問で引用されるなどして話題となった。
そして雑誌にも全文が掲載され、しまいにはテレビのワイドショーで連日、俳優陣が朗読するなどということもあった。作者は栗良平というヒトで、本人もブラウン管に登場し朗読したり、各地を講演行脚をしていた。
ただ当時の僕は、けっこう醒めた目でみていた。というのも母が、
「私だったら、そば屋で食う金があればスーパーで麺買って、あんたらに食わせるわ」
と言っていたのを聞き、そういえばそうだな、なんか嘘くさいなと思ったからである。
それからしばらくして、作者のスキャンダルが報じられるようになり、いつの間にかブームは沈静化していった。のちにタモさんも母とおなじ様な発言をしていたのを知り、冷静に考えたらそりゃそう思うよなと納得した。
だが実際には多くのヒトが感動していた。それ自体は悪いことではないのだが。ブームのさなか、ワイドショーで朗読したあとにドヤ顔していた芸能人を思い出すと、こちらがちょっと気恥ずかしくなりはするけれども。
今日のところはこれまで。ごきげんよう。この呼吸がつづくかぎり、僕は君のそばにいる。