このマンガが週刊少年サンデーに連載されていたころは、タイガーマスクの全盛期だったんだ。あのころはクラスのみんながプロレスごっこに夢中になっていたのだ。毎週プロレス中継も熱心に観ていた。
そんな俺にとって、このマンガはバイブルのような存在だった。いま読み返してみても面白い。やっぱり梶原一騎チルドレンなのだ。もうDNAに染みついちゃってるとおもうぐらいに。
いまとなっては、虚構や誇張もあるってわかっているけど、それでも評価は昔となんら変わらない。このマンガのおかげで、ブラウン管に映るプロレスラーを、感情移入して観ることができたのだ。
お気に入りはブッチャー編とアンドレ編。どちらもプロの悪役として日本人レスラーに立ちはだかってきたけれども、それまでのレスラーとしての苦悩を知ることで、プロレスそのものを味わい深く観ることができた。
ブッチャーは黒人、アンドレは巨人とそれぞれ世界的にみれば異形のレスラーだった。そしてその異形さゆえに、プロレスラーとして大きな悲しみを背負ってきたのだ。
その悪役ぶりが仇となって奥さんに逃げられたブッチャーが、置いてけぼりにされて泣きすがる息子にむけたコトバ。
「この悲しみはもっとパパをレスラーとして強くするっ!かならず!!」
梶原流の誇張はあるかもしれないが、ブッチャーの異形としての孤独そのものだ。ここからファンクスにフォーク攻撃するような”残虐なブッチャー”に変わっていくのだ。
今日のところはこれまで。ごきげんよう。この呼吸が続く限り、俺は君の傍にいる。