KOTOBASM

頭の中にある思想は言葉ではない。映像でもない。いうなれば《もやもや》である。その《もやもや》を手先を使って記録することではじめて言葉になる。

行け小林!タイガーの仮面を剥がせ!【小林邦昭】

 小学生の頃、プロレスは大変な人気で、金曜日の夜はテレビ朝日で放送された新日本プロレス、土曜日の夕方は日本テレビで放送された全日本プロレスと、毎週必ずといっていいほどチェックしていた。そして昭和56年、小学校3年生のころ、タイガーマスクが鮮烈なデビューを飾った。



 周りの男子はみなタイガーに熱中していたのだが、連戦連勝を重ねるこのスーパースターがどうも好きになれなかった。勉強もできない、運動もできない、コンプレックスだらけの捻た小学生だったからかもしれない。あるとき外国人ばかりと戦っていたタイガーの前に、ある日本人レスラーが現れ牙をむいた。それが小林邦昭だった。

 あきらかにいままでの外国人レスラーとは違う。闘志どころか憎悪むきだしのファイト。初めのうちは華麗な蹴り技やフィッシャーマンズスープレックスを出し、互いに高度な技を出し合うのだけれども、やがてタイガーのマスクを剥がそうとする小林。

 その姿を観てテレビの前でワクワクしていた。心の中でやっちまえと思っていた。そしてあともうちょっとというところで、反則負けを告げるゴングが鳴らされる。いまおもえば絶妙なタイミングだったな。ゴングが鳴っても互いにやりあう。タイガーも怒り心頭だ。 

 ある日家族で千葉の健康ランドに行ったときのこと。偶然に生の小林邦昭を見たことがある。ご家族で来てゲームコーナーで楽しそうに遊んでいた。握手してもらおうかとも考えたのだが、その姿を見てやめてしまった。生で見られただけで満足だったし。テレビでは見られない優しい顔だった。