KOTOBASM

頭の中にある思想は言葉ではない。映像でもない。いうなれば《もやもや》である。その《もやもや》を手先を使って記録することではじめて言葉になる。

心優しき「まだら狼」【上田馬之助】

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 悪役レスラーというのは、実は優しいヒトのほうがいい働きをする。逆にベビーフェイスの方は、金に汚いとかそういう裏の顔のあったほうがよかったりする。それがプロレスという一種の見世物の妙味だ。

  金髪メッシュの髪にひげ面で、ついたあだ名は”まだら狼”。190cmを超える体格で竹刀を振り回して悪の限りを尽くした、日本人初の本格ヒールレスラー上田馬之助も、実は心優しい悪役の1人であった。

 タイガージェットシンとの悪役コンビは、”正義のレスラー”アントニオ猪木を引き立てるのため、十二分に悪事を働いた。あまりにもリングでワルだったものだから、親戚の子どもに「おじちゃん来ないで」といわれたそうだ。

 その裏で馬之助は、施設を慰問したり、ボランティアをしていた。施設の子どもにもすごく慕われていたそうだ。それをマスコミが公表したいといったところ、イメージが壊れるからと断ったのだとか。これぞプロ。


 けれどもそんな上田馬之助も長年やっていくうちに、だんだんその人のよさが隠し切れなくなってきた。それに気づいた誰かが、カレをCMに出そうと考えたのだろう。そうしてテレビで流されたのがトライデントシュガーレスガムのCMであった。

 ガキのころ、このCMが大好きであった。せっかくここまで悪役のイメージを守るために頑張ってきたのに、そこでつい出てしまうのが、このヒトらしい。セリフの話し方からして、朴訥とした人柄の良さがにじみ出ているではないか。

 今日のところはこれまで。ごきげんよう。この呼吸が続く限り、僕は君の傍にいる。