「残るは食欲」という本がある。食にまつわるエッセイをまとめた本で、著者は阿川佐和子。千葉から藤沢のアパートに戻る際、旅のおともに購入した。なんでこの本を読もうということになったのか。
それはもう直感である。残るは食欲とか銘打っているけれども、阿川先生ってちがう欲が強そうな感じがする。食欲もあるヒトだというのは、この本を読了してわかった。かといってその血筋のよさも手伝ってか、ドロドロの金銭欲みたいなのはない。
ではなにが強そうなのか。ただただ性欲が強そうなのだ。昭和28年生まれというから、すでに還暦はすぎているが、まだまだ現役という脂のノリみたいなものをかんじる。なにを以てしてそういう見解になったのか。
思いだしてほしい。文庫本というのは表紙をひらくと、カバーの袖のところに作者のプロフィールが載っている。出版社によっては顔写真付きで。この本も阿川先生の顔写真が載っている。
いい歳してなんなのだこれは。このなんていうかセーターの袖を余らせてちょこんと手を出すかんじ。これってだいぶ前に裕木奈江がやっていなかったか。それも含めた裕木奈江の雰囲気そのものって、世の女性の総スカンを食らっていなかったか。
それを還暦をすぎた阿川先生がサラッとやってしまうことに魔性を感じるのであった。先生の魔性はまるでフンコロガシのように、さまざまな場所において、おじさまたちをクソにしてころがすのであった。
今日のところはこれまで。ごきげんよう。この呼吸が続くかぎり僕は君の傍にいる。